【決算発表】アップスタート(Upstart)2021年第2Q [UPST]

決算まとめ

事業内容

 Upstart($UPST)はクラウドベースのAI与信プラットフォームを提供している企業です。AIにより自動化された効率的な与信判断により、消費者は’’より高い承認率’’と’’より低い金利’’の恩恵を受けることができます。現在、Upstartのプラットフォームでは主に無担保個人ローンを提供しています。そこから事業領域を広げるために、2020年から自動車向けローンを開始しました。そして、自動車ローン事業を拡大するために、2021年3月にクラウドベース自動車小売ソフトウェアを提供するProdigy Softwareを約1億$で買収する契約を締結しました(買収は2021年Q2完了予定)。自動車ローンでの売上高が乗ってくるのは2022年になってからとのことです。(2021年の決算には殆ど影響がない)

事業環境

 現在、90%以上の金融機関がFICOスコアを利用し、誰がどの程度の金利で貸付を承認するかを決定しています。FICOスコアは単独で使用されることはありませんが、多くの貸付モデルのベースとなっています。銀行の与信モデルには一般的に8~15個の変数が組み込まれており、より精巧なものでも30個程度と言われています。しかし、当然のことながら世界はより複雑であり、これらのモデルではデフォルトの確率を確実に推定する能力には不十分であるため、多くの借り手はこの不正確な信用モデルの影響に苦しんでいます。借り手は高い金利により最終的に返済しきれないローンを組まれ、借り手と貸し手の両方に害を及ぼします。

 2019年12月のUpstartの研究によると、ローンを組んだアメリカ人の5人に4人はデフォルトに陥ったことはありませんが、アメリカ人の半数以上が優良な貸付を利用することはできません。FICOスコアが高い(信用度が高い)消費者であってもデフォルトの損失を実質的に補填するため、ローン支払いが高額になる傾向があります。しかし、UpstartではAIの技術を活用しローン貸付のリスクを正確かつ定量的に判断することができるため、従来のモデルで弾かれた優良な顧客を獲得することができます。Upstartの技術により債務者は低金利で借りることができ、債権者は正確な与信判断を効率的に行うことができます。

Upstartプラットフォームの導入による利点

消費者のメリット

・従来の貸付モデルと比較して承認率が27%高く、金利が平均16%低い

・貸付がウェブ上で完結する

 (2021年度では貸付の71%が書類のアップロード、電話確認が不要で即座に承認

銀行パートナーのメリット

・競争力のあるデジタル貸付を使用できる

 (大規模な予算が不要で費用対効果が高い)

・顧客基盤の拡大

・銀行の与信方針やリスク許容度でカスタマイズ可能

・損失率の低下

 既存モデルと比べ、承認率を保ち損失率を75%低下させている

ビジネスモデル

 Upstartの収益は主に銀行からの手数料で構成されています。手数料は大きく3つに分けることができます。

・銀行からの手数料はプラットフォームを通じて貸付が成約した際の紹介料

・プラットフォーム使用料

・消費者のローン返済時のサービス料

 (ローン有効期間の未払い元本に基づいて計算)

 Upstartプラットフォームでは、通常1000$~50000$の無担保個人ローンを提供しており、金利は通常6.5%~35.99%、返済期間は3~7年となっています。

リスク要因

・収益先の偏り

 2021年Q2現在、アップスタート(Upstart)の収益の殆どが上位2社のみで構成されています。

 CrossRiver Bank(CRB)が62%、第二位の企業が23%を占めています(上位2社で85%)

・景気サイクルの長期テスト不足

 景気後退サイクルの状況下で提供されておらず、AIモデルが不景気の状況下で信用リスクを正確に反映できない可能性があります。その場合、パフォーマンスが想定以上に悪化する可能性があります。

決算まとめ

 それでは今回の決算を見ていきましょう。

●2021年第Q2

 売上高 $194M(予想157.8M)前年同期比+1018%

 EPS 0.62$(予想0.25$)

・取引ローン数 286,864件 前年同期比+2315%

・コンバージョン率     24.4%(2021年Q1は22.0%)

●2021年第Q3ガイダンス

 売上高 $205~215M(予想$161.6M)

・貢献利益率 45%

・純利益   $18~22M

●2021年通期ガイダンス

 売上高 $750M (予想$601.1M) ※$600Mから上方修正

・貢献利益率 45%  ※42%から上方修正

 売上高は予想$157.8Mに対し$194M(前年同期比+1018%)、EPSは予想0.25$に対し0.62$と売上高、EPS共にコンセンサス予想を上回りました。また、取引ローン数は286,864件と前年同期比+2315%、コンバージョン率は24.4%と前期から2.4%上昇しました。

 2021年Q3の売上高ガイダンスは$205~215M、2021年通期の売上高ガイダンスは$750Mとガイダンスを上方修正し、コンセンサス予想を大きく上回りました。

 これらの決算内容を受け、決算発表後に株価は20%以上上昇しました。

業績

 それでは業績について詳しく見ていきましょう。

売上高

 上のグラフは「売上高と営業利益率の推移」になります。Upstartは売上高に季節性があり、Q4の売上高が高く、Q1の売上高が低くなる傾向があるとのことです(Form S-1に書いてありました)。成長企業なので過去の収益は右肩上がりに伸びていますが、Q1は伸びにくいという認識をしておけばいいと思います。

 2021年Q2の売上高は$194M(前年同期比+1018%)となり、大きく上昇しました。前年同期の収益がコロナで大きく落ち込んでいるため成長率が化け物みたいな数字になっていますが、前期比で見ても+60%と驚異的な成長を見せています。また、営業利益率も19%と過去最高の数字を叩き出しています。

貢献利益

 上のグラフは「貢献利益と貢献利益率の推移」になります。貢献利益は手数料収入から債務者獲得費用、確認費用、サービス費用を引いて算出されます。売上高と同じ様な推移をしており、パンデミックの底から大きく成長しています。また、貢献利益率も52%と高水準を維持しています。

取引ローン数、コンバージョン率

 上のグラフは「取引ローン数とコンバージョン率の推移」になります。取引ローン数は286,864件と前期比+69%、コンバージョン率は24.4%と前期から2.4%上昇しました。コンバージョン率、所謂成約率はどんどん上昇していることが分かります。

取扱ローン金額

 取扱ローン金額は$2.79Bに到達し、前期から大きく増加しました。。

融資の完全自動化率

 こちらのグラフの数値は書類のアップロード、電話確認が不要で即座に承認された割合を表します。

コロナの影響により一時落ち込んだものの、70%以上の水準に達しました。この数値が高くなればなるほど効率的に融資判断が行われていることを示します。おそらくここら辺の数字が限界なのかな?と思います。ですのでこの数字を維持できるかが重要となります。

売上の偏り

 Upstartのリスク要因として上位二社の売上高比率が点が挙げられます。

Form 8-Kの資料によると上位二社の売上高全体に占める割合は下記のとおりです。

・CRBからの収益    2020年Q2:70% → 2021年Q2:62%

・2位の企業からの収益  2020年Q2:-   → 2021年Q2:23%

※上位二社で収益の85%を占める

 現時点で上位二社での売上高の割合が非常に高いことが分かります。他の企業での収益が増加すればいいですが、短期的には2社の収益によって大きく左右される状況であることを留意する必要があります。

株価

●2021/8/13現在 

 ・株価   195.6$

 ・時価総額 $13.8B

 ・PSR    18.4倍

   ※2021年の通期ガイダンス売上高で計算

 Upstart(UPST)の株価は2021年Q1の決算発表後に跳ねたものの、ロックアップ解除が控えており株価はヨコヨコで推移していました。しかし、ロックアップ解除から日が経った今回の決算で予想を大きく上回ると株価は+30%ほど跳ね最高値を更新しました。

 個人的には売上高の85%が上位二社が占めている点、長期の不況下での運用経験不足である点に懸念があるため、長期枠での投資対象にはなりません。今回の収益の爆発的な増加はアップスタート自身の事業拡大というもの勿論ありますが、上位二社の収益が大きく上昇したためアップスタートの収益も増加したこともあると思います。今後事業を拡大していくことができるか、上位二社への収益依存を脱却できるかに注目です。また、自動車ローン市場は無担保ローン市場の何倍も大きく、収益の目途が立つ2022年には収益の増加が見込まれるため新領域での成長に期待です。

まとめ

・2021年Q2の決算は売上高◎、EPS○、ガイダンス◎

・上位二社への収益依存  上位2社で収益の85%を占める

・決算を受け株価は1週間で+30%以上暴騰

・自動車ローンの収益が大きく影響してくるのは2022年以降

参考資料

Upstart Announces Second Quarter 2021 Results | Upstart Network, Inc.
SAN MATEO, Calif. --(BUSINESS WIRE)--Aug. 10, 2021-- Upstart Holdings, Inc. (NASDAQ: UPST), a leading artificial intelligence (AI) lending platform, today annou...
https://ir.upstart.com/static-files/0281f9ee-44c6-47e3-8136-32295b007347

コメント

  1. […] 2020年に自動車ローンをすでに開始し、2021年3月にクラウドベースでの自動車小売りソフトウエアを提供する企業Prodigy softwareの買収をしています。自動車ローンの売上げが計上される2022年決算への期待が高まっています。そして今後は学生ローン、住宅ローン、グローバル進出も検討し事業拡大を進めています。リスク要素としては、銀行2社で売上げの85%を占めているため、今後のパフォーマンスに注目して行く必要がありますが、長期投資で将来大きな利益を狙える可能性は十分にあるでしょう。(参照:タニーの成長株投) […]

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